当日の参加者数 民間企業:9,行政機関:0,大学関係:18
※この討議メモは,聴講者のメモを総合して作成したものです.不適切な点がありましたら(牛山)までお知らせ下さい.
京谷孝史(東北大学大学院工学研究科土木工学専攻)
- Q.リアルタイム予測には応用できるか
- A.危険箇所の事前診断や設計などに使う目的. 「降雨による強度低下」を事前に予測しておく(地盤に水を含んだときのc,φが事前にわかるということ)ものであり,リアルタイムに変わる量がないのでリアルタイムに使うという場面はないだろう.
- Q.使用しているDEMの解像度はどのくらい?
- A.5mです。したがって,解析を行う箇所では何らかの地形計測が必要.
- Q.危険箇所の抽出はすでにいろいろ方法があると思うが.
- A.従来の方法では崩壊実績がないと抽出がしにくいが,もっとも基本的な地形情報を元にした計算を行うことで危険性のある箇所をまず抽出できる.その上で,危険だと思われる箇所からサンプルをとってより深く検討する,といった作業が行えると思う.
渦岡良介(東北大学大学院工学研究科土木工学専攻)
- Q.解析において、地震中の雨の影響は入れているのか
- A.入れていない.計算期間を決めて,降水量に相当する水を与え続けるような検討は可能だろう.
- Q.地滑り崩壊において、破壊の瞬間が地震中であるか地震後であるかというのは重要な情報か
- A.水圧の上昇によって破壊が起きるのは地震後で、地震中に破壊が起きるのは,振動によってサクションが切れるような形態と言えるだろう.ただし,実際には証言者もわずかであり,証言者が見た現象が,崩壊開始時刻を示しているのか,証言者の身近に到達した時刻を示しているのかも明確ではなく,あまり厳密な議論はできないだろう.
- Q.土の中のサクションが切れるとはどういうことか.降雨によってサクションがきれるということは理解できるが、地震で揺すられてサクションが切れるというイメージが湧かない.
- A.厳密には分からないが、飽和している状態の場所で、粒子同士が繋がっている状態が振動によって切れること。
- Q.でも、サクションが切れても、また繋がるのでは?
- A.その辺が良くわかっていないのだが、5月築館の事例では自由水化する現象までは確認している.
- Q.造成地で盛土して滑った例を紹介していたが(築館)、盛土したエリアと滑り面は一致しているか.
- A.ほぼ一致している.
- Q.土砂災害では被害額の算定はしているのか?
- A.災害統計上に出てくるのは,公共土木被害額,農業被害額などで,民家の損壊による被害額などは余り算定されていない.
- Q.地震以外にも,造成緩斜面で崩壊することはあるのか.
- A.ありうる.築館では数年前の雨の日にも発生しているらしい.このように斜面色々な要因で壊れるので、地形と外力と材料を考慮して、整理していかなければならないと思う.
- Q.施工の立場からの考えだが、良心的な施工者であれば、盛土を造る際に最適含水比になるように造るはずだが、土に負圧の力で毛管現象のようなものがあると、最適含水比で盛土を造ってもだめなのだろうか?
- A.築館も,河南町の崩壊も,造成時期が古いので造成時の資料が乏しくどのように盛土をしたかなどはよくわからない.河南町のケースでは,最適含水比できちんと締め固めても、震度6の地震ならば滑るのかもしれない.