東北大学
大学院工学研究科
附属災害制御研究センター
地域防災ゼミ2004 討議メモ 2004/5/25
当日の参加者数 民間企業:18,行政機関:4,大学関係:21
※この討議メモは,聴講者のメモを総合して作成したものです.不適切な点がありましたら(牛山)までお知らせ下さい.
真野先生
- Q 発表の中で被害浸水エリアが示されていたが、人的被害や経済的被害の方はどの程度か?
- A 氾濫したのは内水(下水、雨水)であったので人的な被害はなかった。経済的被害については,インドネシアでは保険制度がないことや、違法に居住している人々がいることなどの理由から、統計がとれなかった。
- Q インドネシアの河川は、日本の河川とは規模などが違うようだが,特徴は?
- A 日本のように大きな河川はない。主な河川は13本で、これらは水路のようなイメージの河川。特徴としては、幅が5m程度で、蛇行が残ったままの、疎通能力のない河川。
- Q 身近なところで,例えば広瀬川の中州の扱いが最近問題となっているが、洪水災害の立場から何かコメントは?
- A 中州を残したとしても、氾濫する可能性は高いままであると考える。環境面も配慮すべきだが難しい問題である。
- Q インドネシアでのゴミ処理はどうなっているか
- A 収集システムなし。最後は海へ流れていく。ジャワ海は蓄積したゴミによって汚染されて魚が住めない地域もある。
- Q ジャカルタは900万人の都市とのことだが、地下構造物や地下街などはないのか?
- A 地下構造物は無い。また雨水ポンプ場は北部に一つあるが現在は壊れていて使えない。きちんと管理された下水処理システムもない。
- Q 河川管理に関する制度はどのようになっているのか?
- A 法律や体制をつくってもケアしていない。法律がもともと少なく、法律があっても監視できていない。
- Q ここ20年でグリーンエリアはなぜ減少したのか。また,流出係数はどれくらい変わったか?
- A 経済発展が優先であったと思われる.流出係数が具体的にどう変わったかはわからない。
- Q 今回の水害時の48時間降水量がそれほど大きくないとのことであったが,もっと長期の降水量,例えば月降雨などが平年に比べて大きかったようなことはないか.
- A 定量的にはまだ。積算のしかたは色々あるので、計算することは可能。
- Q 紹介されていたゴミというのは,もともと捨ててあったゴミが流されたものが多いのか,それとも水害で流失した災害ゴミが多かったということか.
- A もともと捨ててあったゴミが多かったと思う.水害で生じたゴミがそれに加わっていると思う.流木はあまりなかったようだ.
田中先生
- Q 河川環境評価の方向性は?
- A 環境を定量的に評価するのは難しいので生物や環境の専門家と一緒にやったらいいと思う。中州というのは生物にとって天敵を避けることができる絶好の場所である。防災、流れの解析などといった技術者と植物の専門家がコラボレーションして評価すべき。最近は役所でも両方の見地からやっているようだ。流域一環で考えることが必要.
- C 社会基盤はBenefitを計算しやすいが、防災はBenefit評価がしにくい.とはいえ,少しでも定量的なアプローチが必要だろう.
- Q 近年河口地形が安定している理由はなにか
- A 現在計算しているが,防波堤などの構造物からの反射によるものなどが考えられる。
- Q 河口地形の安定化や砂浜の後退などは,ダム整備など人工的要因も大きいと思うが,近年森林が安定していることによる日常的な土砂生産量の減少も影響していると思う.森林の状態は明治から昭和初期に荒れた時代が続き,藩政時代には安定した時期もあったなど,長期的には変動している.仙台付近の海岸地形の変化からそのような変化を読み取ることはできないか.
- A 最近見ることができるようになった幕末くらいの地図を見ると、精度は高くないが、河口が突き出ているのが確認できる。藩政時代くらいまではさかのぼって検証できる可能性があると思う.
- Q 100年後の仙台海岸はどうなっていると考えるか
- A 土砂供給が少ない状態は続くと思うので,浸食傾向が続くのではないか.ヘッドランドなどの技術で養浜がなされていくのではないか.