東北大学
大学院工学研究科
附属災害制御研究センター
地域防災ゼミ2004 討議メモ 2004/5/11
当日の参加者数 民間企業:26,行政機関:13,大学関係:14
※この討議メモは,聴講者のメモを総合して作成したものです.不適切な点がありましたら(牛山)までお知らせ下さい.
今村先生
- Q.津波の1波,2波やそれ以降について、湾の固有振動などと一致するの
か(三陸のように)?また,反射波などとの共振によって湾奥で大きくなる
のか?
- A.1波の周期は,発生した津波の固有の周期になります.その後,湾内など
の固有振動周期などと近いと,共振が励起され,振幅が増幅されます.
- Q.地方自治体は湾内の被害(復振動によるものなど)を把握しているのか?
- A.最大波高を知るにとどまっていると思う。周期、継続時間などは(被害を知
るのに)大切な要素だが、把握していないと思われる。
- Q.日常の観測から、湾内の固有振動の周期は分かるのか?
- A.津波以外でも,外力が湾内に入れば,共振現象は起こるので,日頃の観
測により,湾の固有周期は推定できる.さらに,理論や数値解析による推定
方法もある.
- Q.人の命の部分では逃げる事が第一だと思う。人の心の中での
モチベーションの研究はいないのか?
- A.心理学的,社会学的研究は,他の機関などで行われている。情報の入
手,理解,その後に行動というプロセスを経る.逃げる
というアクションを起こさせることが一番難しく、意識を持ってもらいたい.
あまり意識の高い状態を24時間365日続く事は難しいが,ちょっとした
心がけや対応で,適切な行動がとれると思っている.
- Q.心理学者との連携は取っているのか?具体的な策は?
- A.そういう動きはかなり以前からある.たとえば,京大防災研では理工系の研
究者だけでなく,社会科学系の研究者も構成員となっており,共同で研究が行わ
れている.我々に直接関係するものとしては,まだ採択されていが、申請中の2
1世紀COEの中で考えている。
高橋先生
- Q.走行の影響について、5月26日の北海道の地震はノッペラとした海岸
線で三陸などは入り組んだ海岸線だと思うが、どちらの方が津波被害は大きいの
か
- A.一般には三陸だが、発生場所の断層との距離が近い方が大きい。
- Q.日本海側津波で大陸(中国)による反射の影響はあるか?
- A.反射はあり,観測もされているが,反射波はとても小さいので、被害として
は考えなくてよい。また反射は日本海中で継続する。
- Q.研究者と一般とでは,たとえば「震源の違いによる最大波高の違いは小さい」
と言われた時,「小さい」を具体的にどの程度とイメージするか,というところ
でギャップが生じるように思うが,どうか.
- A.そう思う.具体的な数字をしめす方がよい場合もあり,逆の場合もあるなど
,なかなか難しい.
- Q.日本海側での地震発生予測は全体的に確率がとても低いと思うが、そ
れは近年頻繁に地震が発生したためか?
- A.違う.たまたま1983年,1993年と記憶に新しい時期に日本海側で地震が発生
しているが,これより前の歴史時代にほとんど明確な地震の記録がないため,低
い確率になっているもの.1983年以前に,現在と同様な確率評価がなされたとし
ても,やはり同様な低い確率が示されたはずである.すなわち,示されている発
生確率が低いからといって地震が起こらないわけではなく,日本海でも地震,津
波に関する研究,対策をしていかねばならない.