東北大学
大学院工学研究科
附属災害制御研究センター
地域防災ゼミ2004 討議メモ 2004/4/20
当日の参加者数 民間企業:9,行政機関:6,大学関係:15
※この討議メモは,聴講者のメモを総合して作成したものです.不適切な点がありましたら(牛山)までお知らせ下さい.
佐藤先生への質問
- Q.朝日新聞の記者が地震災害は減っていないと指摘したが,実際は関東大震災か
ら減っていってるとのではないか?
- A.「前(1978年)の宮城県沖地震と次の想定宮城県沖地震の人的被害を考えた場合,
地震像が同じと仮定すると,建物の倒壊を要因とした死傷者の減少は
建物の耐震性の向上と古い建物が滅失する状況から容易に推測できる。
ただし,社会環境の著しい変化により,建物被害以外の人的被害の要因が
次の想定宮城県沖地震では大きな問題となると考える。
その重要な問題が室内環境における家具などの転倒による負傷であり,
社会の変化とともに,人間が新しい被害要因,被害モードを生むと考える。」
- Q.住民が防災行動を起こすためのインセンティブな情報が提供されていないが,
誰がどのような情報提供をすればよいのか?
- A.「産官学連携組織である宮城県沖地震対策研究協議会の中の取り組みの一つとして,
文部科学省の防災研究成果普及事業に提案をする予定であるが,
その中で地域防災力の高度化にとってインセンティブな情報と方法について,
有効性を検証していく必要があると考える。具体的には今後の取り組みである。」
- Q.リスクマネージメントプランは個人を対象に必要となり,こうすればこれぐらい効果があるというプランだが,個人のレベルだとリスクへの対応策が難しいのではないか?何か具体的な策は?
- A.「即答することが難しい質問です。例えば,秋田市では,単なる防災マップではなく,数値情報も含んだ防災カルテを小学校区ごとに公開しており,小学校区どうしで
地震危険度を比較することも可能になっている。
それでも地域防災力の高度化にとって有効な防災ユニットではないと考えるし,
秋田市の地域住民が十分に有効活用もしていない状況を調査で明らかにしている。」
源栄先生への質問
- Q.リアルタイム地震工学やインセンティブな防災情報は難しいが,何を工夫したらより実現・普及するのか?
- A.基礎耐力を上げることを考えるべき.何を最適化するか,どういう考え方で防災対策の費用を考えるかが重要になる.また,防災対策の費用,性能に対して評価する必要もある.評価関数を決定し,それを最適化することが重要.ハード面とソフト面の二つの方向から防災対策のアプローチができる.
- Q.今現在,建設中の建物,住宅などはどのぐらいの地震にまで耐えられるのか?
- A.瓦屋根をトタン屋根にするだけでも1オーダーの差がある.現在の建物は震度6強には耐えられる(IS値=1).建築物は大量生産品ではなく,存在している場所に対する条件が違うため,この建物がこの場所に建っているときにどれくらい耐えられるかという検討はできるが,一般論的に言うことは難しい.外力の蓄積や強度の低減係数などをどう考慮したらいいかという問題もある.
- Q.強度型,靭性型のどちらで補強するのか,減衰方向はどうするかなども地盤の情報によって議論していくべきではないか?
- A.地盤に思ったような地震が入っていくとは限らない.高砂地区では周期1秒付近までが作用し,それ以上は作用されないため地震に強い.そのような地域性の問題もある.加速度が大丈夫でも変形によって破壊されるケースもある.このような場合は補強が難しいが,建物強度を上げてやればよい.ハザードマップもスペクトルレベルで議論していけばということだったが,構造物もそのように議論していけばよいかもしれない.
- Q.資料のp12にハザードマップとIs値分布を重ねているが,これなら震度情報だけでなく被害も伝えやすい.一般向けの情報としてはこれに被害率を入れていけばよいのか?
- A.Is値は建物の耐震性を表す.揺れが大きい地域でIsの小さい建物が耐震補強
の優先度が高くこれから被害率を知ることができる.